子供「ワーイ!焼き肉だ!おいしそ〜!!」
父「ハッハッハッ!今日はボーナスがでたからいっぱい食べていいんだぞ」
子供「やった〜!」
父「父さんは、むかし肉屋で働いていたから、肉の事にはちょっとうるさいのだ。おまえに分かる様に説明しながらちゃんと注文してやるからな」
子供「うんっ!」
父「まずはタン塩から食べよう。タンはどこの肉か分かるかい?」
子供「知らない」
父「食べた事あったっけ?」
子供「あるよ。大好き」
父「そうか。タンは牛の舌を引き抜いて皮を剥いて薄くスライスした肉なんだよ。牛の舌はお前や父さんのと違って大きいからいっぱい食べるところがあるんだなぁ〜。しかし、舌を引き抜かれたら痛いだろうな。ハッハッハッハッ!」
子供「…」
父「おっ!きたきた。鮮度が良さそうだぞ。まさに抜き立てほやほやの舌。ハッハッハッ!しっかり食べなさい」
子供「…」
父(ムシャムシャ頬張りながら)「どうした?いっぱい食べなさい。美味しいぞ!」
子供「なんだか食欲がわかない…」
父「そうか…じゃあ他の肉を頼もう。すいませ〜ん!ロースとカルビとツラミとミノくださぁ〜い!」
子供「こ、今度はどこの肉なの?」
父(とても得意気に)「では教えてしんぜよう。まずロースは背中の肉。カルビはあばら骨の間の肉。ツラミは顔の肉。ミノは第一胃袋。ハッハッハッ!牛さん可哀想〜ツラミなんて顔の肉を削がれるわけだからなぁ…でも美味しい〜♪」
子供「なんか食欲がわかないなぁ〜」
父「えっ!?なんで?こんなに美味しいのに」
子供「…」
父「そうだ焼き肉奉行の父さんとして、焼き肉になる前の行程をお前に教えてあげなくちゃね」(笑)
子供「別にいいよ…」
父「ます枝肉という物があるのだよ。牛一頭の皮を頭から剥いだ状態の物なんだよ。それをノコギリや包丁を使って切り刻むのさ」
子供(青い顔)「もういいよ…」
父「枝肉になる前、牛さんは牧場で肉が柔らかくなる様にビールの飲ませてもらったりして呑気に暮らしてるわけさ。ハッハッハッ」
子供「…」
父「ところが、お気の毒な事にある日、牛さんは売られて行くんだよ…そして父さんやお前に胃袋の中に消えてゆくんだ。ハッハッハッ!」
子供「…」
父「肉うまいか?」
子供「ボクもういらない…」
父「なに泣いてるんだ。おかしな奴だな…」
子供「ボクもうお肉は食べない」
父「変わった奴だなぁ〜ハッハッハッ!」