汚れた靴


私は靴の汚れに対して尋常でないほど潔癖である。


身体や衣服なんかは一週間や二週間、洗わなくても平気なのだが靴の汚れだけは耐えられない。


もし外出先で、つま先に泥でも付こうものなら一目散に家へ帰って取り替える。


約束の時間を守るより私は靴のコンディションを守る。


たとえ親の葬式であっても雨の日ならば靴が汚れるからパスするだろう。


靴を汚さぬ様、細心の注意をはらって抜き足差し足をくり返す。


例えるならば太極拳のような歩行である。


だもんで、目的地に着いたときには廃人の様になってしまう。


たとえこの肉体が朽ち果てようと靴のコンディションだけは保ちたい。


他人の靴も気になる。


汚れた靴を履いている人間を軽蔑する。


どのくらい軽蔑するかと言うと「汚れた靴」くらい軽蔑する。


汚れた靴は、汚れた靴みたいなもんだ。


汚れた靴ほどタチの悪いものは無いと思う。


例えるならそれは…やっぱり汚れた靴みたいなもんだ!


靴は大好きだけど、汚れが付くと大嫌だ!


この感情を例えるなら…汚れた靴みたいなもんだ!!