凄く渋いミーは駅のプラットホーム立っている。
「ミーは本当に渋いな〜」としみじみと思っていると、目の前に目障りな大きい広告看板がある。
携帯電話の広告だ。
ミーに言わせれば渋さのかけらも無い安い男の写真を全面に打ち出している。
コイツはこの前の戦争で敵国だった米国の俳優だな。
確か名前はブラット・ピット。
この前は負けてやったが、今度はそうはいかないからな…。
いい気になるなよ!
こんなのブラピが格好つけて携帯電話を耳にあてて立っているだけの写真じゃないか。
まったくナンセンス。
敵国の俳優を使うなんてクレイジー!
アンビリーバブル!
人生に渋さだけを求めているミーにとって、こんな上っ面の体裁だけを装った広告は不愉快の極みである。
こんなダサイ携帯電話を持つ奴は「お気の毒サマ〜」であると思ったが、よく見るとミーのと同じだった。
「買い替えるか…」と思った瞬間、電話が鳴った。
電話に出ると口うるい苦手な上司であった。
ミーはヘコへコと電話越しで見えるはずも無い相手に頭を下げ「すいません。すいません」と渋く繰り返した。
渋いやり取りの最中、ふと見上げるとブラピ…いまミーは広告のブラピとまったく同じ携帯を使い同じポーズで電話をしている。
渋さでは勝るものの、それ以外はブラピにほんの少しではあるが分があるように思う。
ミーの渋さに理解のない凡人はヘコへコミーを見て「あちゃ〜」と思うかもしれない。
渋いミーは考えた…形勢不利である。
ほんの少しではあるが劣勢である。
そこで、渋いうえに懸命なミーは「すいません。すいません」を繰り返しながら、さりげなくコソコソとブラピ広告の前を離れた。
勇気ある撤退である。
この前の戦争もそうだが、負けたとは思っていない。
ネバー・ギブアップ!
イエス・ウイ・キャン!!
ボーン・イン・ザ・USA!!!