ボクの腕時計



















伯父の腕時計が欲しかった。


ためしに「頂戴」と言ったら高校生になったらやると約束してくれた。


ボクは高校生になった。


伯父は約束通りに腕時計をくれた。


ボクは嬉しくて、その時計をはめて、たがめすがめつ飽きもせずに時を忘れて眺めた。


伯父と約束して二年、やっと手に入れた時計が誇らしくてならなかった。


しかし、残念な事にその時計はボクが貰って程なく壊れてしまった。


修理に出したけど直せないと言われた。


クオーツ時計だったので電池が液漏れして、機械が錆びてしまっていた。



ボクは当時の伯父くらいの年齢になった。


何年か振りに伯父を訪ねたら、何故か腕時計をくれると言う。


それは新品の時計だった。


買ってはみたけど、自分には少し似合わないのでお前にやると言っていたが、たぶんそれは嘘だと思う。


実はボクが訪ねて行った事を嬉しく思ってくれて、そのご褒美にくれたのだと思っている。


伯父はそういう人だ。


かくしてボクは伯父から2個目の腕時計を譲り受けた。


メーカーは違うけれど、不思議と高校生の時に貰ったものと形状が似ている気がした。



二個目の時計を貰って一年も経たないうちに伯父は死んでしまった。


伯父に貰った腕時計をはめてお葬式に出た。


時計を見たら涙が止まらなくなった。


このまえ叔父ちゃんに貰った時計は、壊れないで正確に時を刻んでますよ。


できることならボクは叔父ちゃんと話がしたいなぁ。


まずは叔父ちゃんとボクの関係は時計に縁があるって話を…。