「ああ疲れた。死んでしまいたい」と男は誰にも気付かれ無い場所でつぶやきました。
それからごろりと仰向けに寝転がり天井をながめました。
目から涙が止めどなく流れました。
でも5分もするとそうしている事がバカバカしくなりました。
タバコを買いに出掛けました。
タバコに火をつけて空をながめました。
青空でした。
さっきよりいっそう死にたくなりました。
彼はとても裕福でした。
一日で一番好きな食事は、朝のステーキです。
今朝もペロリ平らげました。
彼には働かなくてもお金がどんどん入ってきます。
暇とお金にあかして彼は色んな物をコレクションしました。
少し前は古い石油ストーブを集めていました。
取り分けアラジン製のブルーフレームがお気に入りで15型を42台集めました。
いまはそれにかける薬缶のコレクションをしています。
薬缶のコレクションの次は、それに入れる水のコレクションを始めるつもりです。
彼のまわりには沢山の友達がいます。
何人かは本当の友達ですが、大半は彼のお金と友達です。
影で彼の事を「愛しの金づるちゃん」と呼ぶ友達もいます。
彼はとっくに承知していましたが、怒ったりしません。
いちいち怒るのも面倒なくらい金持ちなのです。
タバコを吸いながら横断歩道を渡りました。
その先にフェラーリを停めています。
タバコを買うためだけにフェラーリを使うのです。
これはタバコを買うためにだけ乗るフェラーリなのです。
どこまでも果てしなく金持ちなのです。
しかしながら、それから三時間後に彼はロシアンルーレットで命を落としました。
僕が彼なら愉快にやれたのに…残念でした。