タコ煎餅


奴は問題を抱えていた。


深刻な表情でその問題に対峙していた。


もう幾日も考え続けているが、まだ解決の糸口すらも見つからないでいる。


しかし、深刻な表情とは裏腹に口は常にモゴモゴ動いている。


バリバリ音もする。


淡路島のタコ煎餅を食べている。


深刻な表情で「タコ煎餅は旨いなぁ〜」とも思っている。


だんだんタコ煎餅について考えだす。


「このままでは一袋を平らげてしまうな…」食べ過ぎである。


誰かに「もう食べるのやめなさいっ!」と言って貰わないと止められないと考えている。


しかし、奴は独り暮らしである。


なので自分で「もう食べるのやめなさいっ!」と言ってから「ハイッ!母さん」と返事をしてタコ煎餅の袋から手を離した。


手の平についた粉をパンパン叩いてから袋の口を輪ゴムでとめた。


また深刻な表情で考えはじめたが、1分も経たないうちにタコ煎餅を食べだした。


再び母さんが出て来て奴からタコ煎餅を奪うが、結局、タコ煎餅を一袋平らげてしまった。


奴の問題はまったく片付かないが、タコ煎餅と母さんは片付いた。


おみごと!