土管の前


午前中、キミは広場の大きな土管の前で、赤いパーカのフードを被って格好つけて立っていた。


ときどき足下の小石を格好つけて蹴飛ばしていた。


それから足下の小枝を拾い、それを剣にみたてて格好つけて振り回していた。


「こしゃくな〜」と台詞のように言いながら、格好つけて見えない相手と戦っていた。


暴れたら熱くなったのでフードを脱いで、格好つけて立っていた…土管の前で。



午後、キミは土管を離れ、小便をしに家へ帰る。


父の本棚から分厚い本を抜き取る。


パール・バック著「大地」と書いてある。


(一)から(四)まである。


抜き取ったのは(三)。


名前の響きでパール・バックは男だと思う。


自分の部屋に本を抱えて引きこもる。


読もうとするが、とても無理。


夕方、キミは再び土管の前に立つ。