小学校4年の頃。
担任の先生は女だった。
先生になったばかりでボクたちが彼女にとって初めての生徒だった。
面白い先生で、よく冗談を言ってボクたちを笑わせた。
ボクが町でたまたま彼女と会ったとき、大きなサングラスをかけてガムを噛んでタバコを吸っていた。
彼女は学校で会う時と同じ調子の笑顔でボクの名前を呼んで手を振った。
だけど何故だかボクはとても決まりが悪かったので走って逃げた。
次の日「なんで逃げるんだよ!」とキーロックされた。
ボクは悪態をついてまた逃げたけどちょっと嬉しかった。
ボクは体操と図工の他は恐ろしいくらいに駄目だった。
宿題もやっていかない事に決めていた。
ある日、先生に「宿題はしなくてもいいから絵でも何でもいいからノートに書いて提出しなさい」と言われた。
「何でもいい」ならとボクはデタラメな日記を書いては先生に渡す事にした。
風が強い日に傘をさしたらアメリカに飛ばされたとか、体は犬で顔が人間の生き物を見たとか、嘘ばかり書いた。
そしたら不思議な事に先生は毎回花丸をくれた。
「将来、小説家になりなよ」なんて言って褒めてくれた。
ボクが4年の夏に先生は結婚してボクが5年の秋に離婚した。
まあちょっといい先生だった。