ボクとカラベラは、これまでずっと並んで歩いている。
ただ、カラベラは歩幅が小さく歩くのが遅いので、ボクはときどき奴の事を忘れて先に行ってしまう。
カラベラはボクに追いつこうと歩幅を広くガチャガチャ音をたてながら早足にやって来るが、ある一定の速度を超えると分解してしまう。
その度にボクは後戻りしてカラベラを組み立ててやらなくちゃいけない。
「私の貴重な時間を無駄にさせやがって!」とカラベラはボクに悪態をつくが、慣れっこなので平気である。
奴の貴重な時間はボクの貴重な時間でもあるので、本当はお互い様なんだけど、ボクはただその事で怒ったりしないようにしている。
カラベラはリュックを背負っていて、そこから何でも出せる。
お腹が空いたら何も言わなくても食事を出してくれるし、飲み物だって出してくれる。
ただ、食べ物や飲み物をボクに渡しながら「何か言う事は?」と必ず聞いてくる。
ボクは心を込めて「ありがとう」と言う。
心を込めて言わないとひどく怒られるからだ。
「ありがとう」と言うと「どういたしまして」と歯をカタカタ鳴らして応えてくれる。
カラベラは食べ物や飲み物は基本的に口にしないが、只一つだけ例外があって飴玉だけは口にする。
ボクに飴をくれたら、必ず自分も包みをむいて口に放り込む。
残念な事に、奴には皮膚も内臓もないから放り込んだしりから道路に飴玉が転がる事になるが、それでも飴玉だけはやめられないらしい。
カラベラの飴玉の様にボクは奴との歩みをやめられない。
居心地の良いカラベラの庇護の下にある。
誰も気付いてないけど奴は愛犬ファニーとボクの隣にいてカラカラ音をたてて歩いている。