マグロ


















司会「では次のコーナーに参りましょう。小吉のグルメレポートです。きょうは小吉さん、どんなお店を紹介してくれるのでしょうか」


小吉「ハイッ!さすらいのグルメレポーター小吉です。本日は日本人が大好きなお魚”マグロ”を安く食べられるお店をご紹介致します」


司会「ホー!それは楽しみですね!!」


小吉「ではVTRスタート」


お店を訪れる小吉の映像が流れる。


司会「マグロの専門店かと思いましたが、普通の居酒屋みたいな感じですね」


小吉「お気付きになられましたね。そうです、ご紹介するお店は居酒屋なんです。しかし、このお店が破格の値段でマグロのお刺身が食べられるという…」


VTRに居酒屋店主が映しだされる。

小吉、店主にインタビュー。


小吉「今日はマグロのお刺身を破格のお値段で食べられると聞いてお邪魔したのですが…」


店主「はい。毎週金曜日の13時からマグロのお刺身が食べ放題となっております」


小吉「ちなみに気になるお値段なんですが…」


店主「いくら食べてもワンコイン。500円です」


小吉「えっ!それは凄いですね。その安さの秘密をお聞かせ願えますか?」


店主「はい。私どもでは、お客様が食べ残されたマグロのお刺身を捨てずに取っておきます。食べ放題は週に一度なので6日分の食べ残しを集めると結構な量になります」


小吉「なるほど」


店主「それを一気に食べ放題でお楽しみ頂けたらと…」


小吉「なかなかのアイデアですね。しかし鮮度などの問題は大丈夫ですか?」


店主「そのへんは自信を持って大丈夫だとお応え致します。普段は一日に3箱タバコを吸うのですが、テイスティングをする金曜だけは吸わないことになってます」


小吉「こだわりですね」


店主「そうです。研ぎすまされた味覚と嗅覚をもってしないと、限りなく黒に近いグレーを演出する事はできません。実はそこが一番苦労するところです。木曜の食べ残しは正直すこしアンモニア嗅がしますが、水曜の食べ残しとミックスする事でバランスをとったりします」


小吉「なかなか大変なんですね」


店主「でも、お客様の喜ぶ顔が見たいから…」


小吉「なるほど。ではさっそくマグロを頂きたいと思うのですが…」


小吉、マグロをつまみ試食しようとするが、アンモニア嗅が気になる様子。


小吉「少し臭いますが…」


店主、マグロに鼻を近づけ、クンクン。


店主「気のせいですよ。たまに匂いの気になる神経質で無粋なお客様もいらっしゃいますから、そんなお客様には、こだわりの絞り立てフレッシュワサビと、大量の醤油に漬けて食べて頂く事をお勧め致しております」


小吉「絞り立てワサビなんですね」


店主「はいチューブから」


小吉「では私もその方法で頂きます…ホウ、ホウ、ホウ…確かにワサビが利き過ぎているのでアンモニアの匂いやヌメヌメした感じが気にならなくなりました。しかし涙が止まりません」


店主「でしょう」


店主、満足そうな微笑。


小吉「今日はどうもありがとうございました!」


店主「どう板橋区!」


大笑いする小吉と店主の映像からスタジオへ。


司会「あれ、大丈夫なの?」


小吉「食べた時は、大丈夫でしたよ」


司会「腐ってないの?」


小吉「ご主人さんは”腐りかけ”だとおっしゃていました。柿でたとえるならば”熟し柿”みたいなものだともおっしゃっていましたが…」


司会「上手いことおっしゃいますね」笑


小吉「もっとも夜はピーピーでしたから、腐っていたと私は思ってます」


司会「ピーピーですか」


小吉「笛吹き童子の様でした」


司会「上手いことおっしゃいますね」笑


小吉「是非みなさんも、安いマグロのお刺身を食べに行って下さい。さすらいのグルメレポーター小吉でした〜!!」


司会「あっ!正吉さん、お店の場所と名前をもう一度」


小吉「板橋区にある居酒屋”ゲロ”というお店で〜す」


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