偽者 / 大久保由希
2022/8/12ギンジンレコードより発売

前作から11年振りのサード・アルバム。ルーツであるソウル・ミュージック、R&B、ファンク、ブルースを中心として、
ロックンロール、ラテン、レゲエなど多彩な楽曲を収録。ドラムスとウォッシュボードの中原由貴(双六亭)
パーカッションのOkyon、ギターの福田慎が参加。自身のスタジオで録音、ミックス。
マスタリングは高橋健太郎。

~ユッキー待望の新作に寄せて~

これが大久保由希による11年振りのアルバムなのですね。

恐らく首を長くして待っていた方も沢山いらしたのではないでしょうか。

斯く言う私もその一人です。

話はそれますが私は毎年アルバムを一枚出すと決めています。

都内で月2回くらいのペースでライブをしてその合間に2~3ヶ月かけてレコーディングをします。

アルバムをリリースしたらバンドでレコ発ライブ用のリハーサルを重ねます。

そして東京でのレコ発ライブが終わると次に名古屋~京都~大阪にツアーして回ると言うのがここ数年のパターンでした。

この状態を維持するのはなかなかどうして結構忙しいのであります。


レコーディングはラフなベーシックトラックに合わせて大久保さんにドラムを叩いて貰う事から始まります。

バンドはドラムが肝なのでレコーディング作業も一番時間がかかります。

この作業が終わると私や松ちゃんが曲に肉付けを施します。

曲によっては、たまたま遊びに来てくれたメリーさんや青山さんの力を拝借する事もあります。

そうやって集めた音を私がミックスしてアルバムを完成させます。

完成までの流れを簡単に書きましたが事はそんなに単純ではありません。

下準備もあるのです。

そんな音源に聞こえないかもしれませんがあるのです。

大久保さんには事前に楽曲を理解して貰うために私が多重録音したかなりラフなデモ音源を渡します。

曲の構成や大久保さん独自のアプローチを録音前に考えて貰うためです。

それから大久保さんは個人練習を積んでリズム譜面を用意してからレコーディングに臨んでくれるのが常となっています。

自称天才ドラマーの私が思いつかず叩けないフレーズを大久保さんは叩いてくれる訳です。

私が愛しのメリーさんに捧げたライオンメリーという曲のリズムパターンなどが良い例かもしれません。

一度聞いて頂ければ幸いです。

ご購入頂いても差し支えありません。(ライオンメリー/福岡史朗&フリル

話が大きくそれました。

すいません。

ここで私が書きたかったのは大久保由希さんはとても忙しかったのだと言う事です。


この11年の間に大久保さんの生活は当然のごとく変化しました。

最大の変化は母親になった事でしょう。

子供は可愛くて愛おしい存在ですが子育てには自己犠牲が伴います。

新生児期の3時間おきの授乳から始まり、離乳食~オムツ~熱が出たぁ~わぁ~幼稚園だぁ~小学校だぁ~うぅ~。

自分の事は二の次になります。

それでも子供と共に享受する喜びがそれらの困難を遥かに凌ぐので子育ては成立する訳です。

しかし母親業に加えて何か事を成すとなると実際に睡眠を削るくらいしか方法がない時期もあっただろうと思います。

それに加えて私とのバンドにその貴重な時間を割かれてもいた訳ですから11年かかっても無理はない!


コロナウイルスの影響でこの二年間はバンドで集まる機会もライブする機会もほぼありませんでした。

不幸な出来事ではありますが神が大久保由希にニューアルバムを作る機会を与えたのだと考えるとそんなに悪いことばかりではないなと思えます。

実際アルバムの内容は11年間の出来事が反映された素晴らしいものだと私は感じます。

粒ぞろいの楽曲に加えてほとんどの楽器を独りで多重録音しているのも凄いと思います。

フリューゲルホルンなんかも吹いてます。

楽器はなんでもこなします。

本人曰く「ただやってみているだけ」だそうです。

そんな大久保由希を私は尊敬してやみません。

私はこの11年振りの新譜を聴き終えて「すごく良いではないですか!!」と呟いたところであります。


福岡史朗