だってだって(下)


粗挽きウインナーを10袋たいらげた部長は「ノドが渇いた!」と猛烈ない勢いで1リットルサイズの紙パック牛乳を一気飲みしています。


勢いよく飲むので口の横から牛乳が漏れています。


「プッハァ〜!」と吠えてスーツの袖口で口のまわりについた牛乳をぬぐいます。


今は真冬ですよ。


夏のビールじゃあるまいし…。


飲み終えると部長は「腹が刺すように痛む!」と呻きだしました。


そりゃそうですよ。


「緊急事態なので、ちょっと行きつけの便所に、薬をきめたベン・ジョンソン並みの早さで行ってくるぞっ!」と走り出しました。


5メートルほど走ったら急に振り返り「便所だけにベン・ジョンソンなっ!」と言って、微笑み、西洋人の様なウインクをしてみせました。


駄洒落ですね部長…。


面白く無いから笑わなかっただけで分かってましたよ。


しばらくして「いやいやいやぁ〜」とベルトを締め直しながらベン・ジョンソンは帰って来ました。


そして「カミさんが待ってるからオレかえる。ゲロゲロ!」と言いました。


部長は独身だと聞いていたので「奥さんいらしゃったんですか!」と言うと。


「居るよ。カミさんと名付けたホルマリン漬けのトイプードルがね」と大笑いしながら言いました。


「ホルマリン漬け?」とボクが言うと「三年前に死んだんだが寂しいからホルマリンに漬けて保存しているのだよ、チミ〜」といかにも楽しそうに言いました。


「家に来て見て行くか?」と言いましたが、丁重にお断りしました。


だってだって伊達部長、もう朝ですから…。