約束の時間
















約束の時間より一時間も早く着いてしまった。


安いお茶を飲めそうな店を探して、そこで時間を潰せたらと思ったけど、どこも高そうなのでやめにした。


大きな重い荷物も持っていたので、ブラついて時間を潰す気にもなれない。


だから、立派なビルのエントランスに続く長い階段の5段目に腰掛けた。


ビル風が強くて、ボクの薄い髪の毛はクシャクシャになってしまった。


格好なんて、もうどうでもいいと思っているから構わないんだけど、今のボクは随分とみすぼらしい有り様なんだろうなと思った。


塩のきいた安いランチを食べたせいで、凄く喉が渇いていたけど、ここじゃ飲み物を調達できる気配がないので諦めて我慢した。


そして、通りを行き交う人達をぼんやり憂鬱に眺めていた。


男、女、子供、若者、中年、年寄り…嗚呼、あたりまえだけどボクの知らない人達ばかりだ。


何一つ良いことが思い浮かばない。


空を見上げてみた。


空は果てしなくて青いと思っていた。


でも空はビルの間に切れ切れに見えた。


ここは都会だな。


父さん、母さん、いまボクは本当にひとりぼっちになってしまった様な気がします。


でも、あと半時間したらこの重い荷物を全部処分してバイクに乗ります。


ガソリンを満タンにして行けるところまで走り続けます。


昼と夜がボクを迎えてくれる予定です。


ボクは眠らずに彼ら間を縫って行きます。


月や星や太陽や雲が話し相手です。


ガス欠になった先がボクの目的地です。


ボクはそこで何か出来る事をします。


ボクに何か出来る事があればと願います…。